退職・解雇・定年

定年の年齢を決めるルールは? 3つのパターンとメリット・デメリット

この記事でわかること

・定年の基準に下限はあるが、上限はないこと
・定年年齢を決めるときには3つのパターンがあること
・3つのパターンの、社員・会社それぞれのメリットとデメリット

 

定年のルールの必要性

会社の定める「定年のルール」は、就業規則に記載されています。

「定年のルール」は、法律上は定めなくてもいいことになっています。


とはいえ、何かしらの基準を設ける必要があります。極端な例、会社は社員が100歳になっても雇用し続けなくてはいけない可能性が出てしまうからです。

 

そのため、ある程度の年齢になったら雇用関係を円満に解消できるように、ほとんどの会社で「定年のルール」を設けているのです。

 

定年の年齢基準


定年の上限に関しては、法律で決まりがないため、会社独自のルールを設定できます。それに対して、年齢基準の【下限】には法律で決められた共通内容があります。


定年は、60歳を下回ることはできません。

 

【参考】厚生労働省 高年齢者雇用安定法第9条における高齢者雇用確保措置

 

定年が何歳かのルールを決める際に、選ぶパターンは3つ

60歳以上であれば設定できる定年の年齢ですが、「高年齢者雇用安定法第9条」によると、会社は社員に対して「65歳までの安定した雇用を確保する義務」があります。

「社員が65歳までは働けるように、配慮してください」 ということです。

そのため、60歳定年だった会社が新たに「定年のルール」を決める際には、下記3つのパターンから選択します。

 

それぞれに、メリットとデメリットがありますので、ひとつづつ解説していきます。

 

パターン① 定年年齢の引き上げをする

定年を65歳以上の年齢に設定します。あくまで「65歳以上」なので、80歳などに設定しても構いません。

【社員にとってのメリット・デメリット】

メリット
少なくても65歳まで「給与水準・待遇・雇用形態」が変わらずに働ける
デメリット
退職するまで退職金は支払われない

【会社にとってのメリット・デメリット】

メリット
優秀な人材を長く確保できる
デメリット
残って欲しくない人材が残る可能性がある

特に「エンジニア」や「職人」のような、齢を重ねるほど技術が増すような仕事では、年齢の引き上げは効果的です。まだ元気なうちに退職されてしまうと、会社にとってはノウハウの流出にもつながるからです。

 

パターン② 希望者が引き続き働けるよう、継続雇用制度を取り入れる

この「継続雇用制度」には、勤務延長制度と、再雇用制度のふたつがあります。一般的には、再雇用制度を利用する企業が多いといえます。定年後にどちらの制度を採用するかは、就業規則に記載しておくことをおすすめします。

勤務延長制度

定年に達した社員を、その後も引き続き雇用する制度です。

【社員にとってのメリット・デメリット】

メリット
「労働時間・賃金」はそのまま、労働条件を変えずに働き続けられる
デメリット
定年前と同じ条件なので勤務時間等の変更ができない

※勤務延長制度には、「退職するまで退職金を受け取れない」というデメリットもあります。ただし会社積立の退職金がある場合、勤務延長に入る前に「支払う」と定めてあれば、退職金を受け取ることが可能です。

会社にとってのメリット・デメリット】

メリット
熟練技術を持つ職人や、優秀なシニア人材に引き続き働いてもらえる
デメリット
賃金水準を変えたくても、変えることができない

 

再雇用制度

「再雇用制度」という名の通り、いったんは雇用契約が解消され、再度雇用という流れを取ります。

60歳になったら一度退職となり、改めて翌日から65歳まで再雇用されます。
(上限が65歳より上の場合は、その年齢まで再雇用)

【社員にとってのメリット・デメリット】

メリット
慣れた仕事内容・環境で働ける、再就職先を見つける時間が省ける
デメリット
上限年齢が「65歳」などと決まっている

この場合、会社と本人の合意があれば65歳を超えても働けますが、会社がそれを受け入れない場合は、本人に働く意思があっても雇用はストップとなります。

また、再雇用後は、給与水準・待遇が下がることが多い点にも注意が必要です。たとえば優秀な人材であれば、60歳の時点で新たな就職先に入社した方が、高い給与をもらえた可能性も出てきます。ただし現在の市場では、そもそも高給での再就職は困難なので、そう多いケースではないでしょう。

 

会社にとってのメリット・デメリット】

メリット
別の雇用形態で雇える
デメリット
会社に残って欲しいと思っていた社員が、辞めてしまう可能性がある

会社のメリットとしては、雇用形態を変えて残ってもらえるという点が大きいでしょう。たとえば60歳まで「正社員」として雇用していた社員を、それ以降は「契約社員」や「嘱託社員」としての雇用契約ができる、ということです。

 

再雇用制度で有期契約で再雇用し、5年を超えた場合、無期雇用になる可能性があります。ただし、継続雇用の高齢者に関する申請書(第二種計画認定・変更申請書)を届け出していれば、定年後に再雇用した労働者は、無期雇用転換の対象外になります。

 

パターン③ 定年退職自体を廃止する

定年退職自体を廃止すれば、その気になれば社員は何歳になっても働ける環境となります。多様な働き方が受容されつつある社会では、選択肢には入りますが、デメリットも大きいのでよく検討しましょう。

【社員にとってのメリット・デメリット】

メリット
老後のお金の心配が減る
デメリット
退職するまで退職金が支払われない / 若い社員の士気が下がる

【会社にとってのメリット・デメリット】

メリット
優秀な人材をずっと確保できる
デメリット
残ってほしくない人材が残り続ける可能性がある

デメリットは他にもあります。たとえば、新人を採用しにくくなるため、組織の新陳代謝が遅くなってしまうでしょう。またシニア層が適度に退職しなければ、役職のポストがあきにくく、キャリアの幅が狭まるということも考えられます。

労働条件を変更したいときも難しくなるので、一見時代に合った自由な制度のように見える「定年廃止」は、会社を柔軟に動かすうえでの弊害が意外と大きいことを理解したうえで、慎重に検討してください。

 

終身雇用の制度が瓦解した、といっても、シニア活用という課題は残りますから、会社は定年に対してのルールをしっかり決めておく必要があります。それは会社に貢献してくれた社員への感謝でもありますし、また会社ノウハウを次世代に引き継ぐという面から見ても、重要なことです。
年金受給年齢の引き上げや、老後2000万円問題などが取り沙汰される風潮です。社員が安心して働けるルールがあることは、優秀なシニア人材に長く働いてもらえるメリットにつながります。今は若い世代しかいない会社であっても、会社としての「定年の考え方」を示しておけば、人材の流出を防ぐ歯止めにもなるでしょう。

 

 

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